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存在の美しい哀しみ(小池真理子)


〈あらすじ〉
「異父兄がプラハに住んでいる」。母の奈緒子が打ち明けた、家族の秘密。母を亡くした28歳の榛名は一人でプラハに旅立った。正体を隠して、兄・聡をガイドに雇った榛名。榛名、奈緒子、そして聡といくつも視点を変えて描かれる家族の歴史。二人の人生には哀しくも美しいドラマが隠されていた。
小池真理子が切り拓く文学の新たな地平!
哀しみに満ちた記憶を嘆く必要はない。それは、自分が懸命に生きたという美しい証なのだから。

〈感想〉
そーいえば、もう一冊読んでなかった小池真理子さんの小説があった…(←発売されたらすぐに買い、大抵の場合はすぐに読むのだが…)と思いだし、昨日の夜、今朝で一気に読んだ。
いろんな視点から奈緒子の人生が描かれている長編小説。
一番心に残ったのは、「我々は戦士だ」の章。
「別に革命家やテロリストじゃなくても、私たちだって、いつも戦ってるじゃない、いろんなことと。生きてくことは大変で、でも生きている以上、死ぬわけにいかないから、死ぬまで戦って生きていくしかなくて…。みんな同じで…。そう思えば、なんだか救われる感じがする。私たちも戦士なのよ。兵士じゃなくて、戦士。企業戦士、っていう意味の戦士でもなくて、人生を戦いながら生きていく戦士」と、奈緒子の言葉。
小説は、どこまでも小池真理子さんの世界で… 読み終えた時は、ベッドに身体が沈み込んでいくような感じでした。

無花果の森(小池真理子)


〈あらすじ〉
逃げるのだ。この世の果てまで逃げ続けて、別の人生を生きるのだ。
新しく始まる人生などあり得ない、と思っていた。過去を断ち切った上で、死んだように現在を生き続けることだけが自分の務めだと言い聞かせてきた。だが、鉄治との出会いでそれは覆された。二人の関係に未来は見えてこなかったが、少なくとも当面、互いに素顔のままでいられるひとときを繰り返すことはできた。 -本文より

〈感想〉
大好きな小池真理子さんの新刊です。いつものように本の世界に入り込んで、息を止めて読む…そんな感じの本でした。
「自分が負わされた傷。図らずも自分が悪魔になって相手に刻みこんでしまった傷。それらを隠蔽し、風化させ、忘れてしまったような顔をしながら、飄々と生きていく以外、方法がないのが人生なのだ。」という文章が、やけに心に残りました。
しばらく… 余韻から抜けられそうにないです…

ブラームスはお好き(フランソワーズ・サガン)


〈あらすじ〉
美貌の夫と安楽な生活を捨て、人生に何かを求めようとした聡明で美しいポール。ディスプレー・デザイナーとして自立し、ロジェという恋人をもつ三十九歳の彼女に、十五歳も年下の美しい金持の息子シモンが夢中になる。
彼女を真剣に恋したシモンは、結婚を申し込むが…。
孤独から逃れようとして織りなす複雑な男女のもつれを描く、パリの香りに満ちた四番目の長編小説。

〈感想〉
またしても… サガン。先日の「悲しみよこんにちは」と一緒に購入した、「ブラームスはお好き」。
この本も、その昔… 確か、高校生の頃に読んだことがある。 
…が、当時の私には、ポールの選択が全く理解できなかったような記憶がある。(まぁ、再び読んでも、なんでこーゆー選択をするかな?という気はするけどね…)
彼女は、ロジェのところに戻ろうとしたのではなく、自分の中で諦め?飼い馴らしていた孤独が恋しくなったのではないかなぁ…?
恋は理屈ではない… 小説の中のポールの行動は、恋(愛?)ゆえの行動ではないような気もするのダ。
それにしても最後のポールのセリフ…「シモン、もう、私、オバーサンなの、オバーサンなの」は、納得できない… まだ、39歳なのに、なんでオバーサンよ?